2013年03月22日

「創作文芸は売れないのか?」ということについて その2

さて、間にイベントやのその準備の新刊作業を挟んで、ずいぶんと間が空いてしまいましたが――
ちょっと前に書いた「創作文芸は売れないのか」の記事の続きを、今日から書いてみたいと思います。

前回は、
「文芸“だから”売れない」という物言いは自分はあまり好きではないし、売れなくて文章を書くものとしての自負が危機にさらされたことに対して、ジャンルやイベントに責任おっかぶせちゃうのはあまり生産的じゃないと思う、というところを軸として、

■本が売れなかったとしても、それは文芸というジャンルのせいでもなく、イベントのせいではない。原因を持つのは自分自身。
■ただし、本が売れなかったことは必ずしも、作品が拙い、ということだけに原因があるとは限らない。ほかに改善できる点はあるかもしれない。
■仮に作品が拙いことが原因であるとしたら、それはもう不平とか述べる前にこつこつ書いて修練積んで上達するほかはない。


みたいなことを書かせていただきました。(詳しくは、2013年02月24日の日記「創作文芸は売れないのか?」ということについて をご覧ください)

そのうえで。
僕がその記事で書いた事柄はあくまでも意識レベル(気の持ちよう)の話で、事例としてあちこちで語られている「創作文芸は売れない」ということに対しての具体的な反論にはなりえないかもしれないことを挙げ、具体的な事例については次回以降にまた書きますと結びました。
なので今回は、文芸ジャンル界隈でときおり耳にする「創作文芸ジャンルに対するジャンル内部からのネガティブな声」について、ひとつひとつ自分なりの考えを述べていきたいと思います。

「創作文芸ジャンルに対するジャンル内部からのネガティブな声」といっても、(前回も書いたのですが)実は僕は自分の知り合いのサークルさんやその近辺において直接「創作文芸は売れない」「冷遇されている」「向かい風だ」「落ち目だ」「orz」みたいな声を耳にすることってほぼないのですよね。
どちらかというと、以前2chにあった「文章系同人にやさしいイベント」スレッドとか、はてなの匿名ブログとか、ツイッターの遠いところで語られているのを見聞きすることがあるだけで。
ただ、匿名という場所にせよこれらが語られるのを目にする機会が多々あるということ――僕が創作文芸ジャンルに身を置いてから10年以上繰り返しこのテーマが浮上するというのは、文芸ジャンルの一部に「文芸ジャンルは冷遇されたジャンルである」という考えも根強く存在しているということなのでしょう。

さて、前置きが長くなりましたが、僕がこれまで目にしてきた文芸ジャンルへのネガティブなイメージや、「こんなことがあった」という声を、思い出せる限りで列挙してみましょう。

(1)文章本は、コミック本やイラスト本に比べて即売会で売れる冊数が圧倒的に少ない。
(2)「コミケは“コミック”マーケット、コミティアは自主制作“漫画誌”展示即売会だから文章は要らない」と言われた。
(3)ネットの掲示板で「小説同人誌はイラネ」的な書き込みをよく見る
(4)**のイベントで、小説ジャンルは漫画より落選率が高かった
(5)コミティアで文章ジャンルだけ変な飛び地配置にされた
(6)立ち読みされた後で、「なんだ小説か」と本を放り投げるように戻された
(7)小説という時点で、手にとってすらもらえない

こんなところでしょうか。
これが全部そのまんま本当だとすると、われらが小説(文章)ジャンルは冷遇というより迫害受けてるんじゃないかという勢いですよねw

僕の考えとしては、これらのよく語られる事象というのは、
・何かもとになる出来事自体はあって、
・その出来事自体は、別に文章ジャンルにさほど冷たい風が吹いていると断言できるものではないのだけれど
・語るひとの主観で深刻なもののように書かれて、かつ伝わっていくうちに肥大化している
というケースが多いのではないかなと思うのです。

ひとつひとつ、見ていきましょう。

【1】文章本は、コミック本やイラスト本に比べて即売会で売れる冊数が圧倒的に少ない。

これはまあ、全体統括的なひとつですよね。「文章ジャンルは売れない」というテーマのそのものと申しますか。

たしかに、一見すると文章は漫画より売れていないように思えるかもしれません。
文芸島の界隈がわりと閑散としている時間(イベント始まってすぐとか)にちょこっと席を立って漫画の島に行くと、人口密度が自分のスペース前の通路よりもずっと濃い気がしたりする。
例えばコミティアで、外周などで列ができている漫画サークルさんはいらっしゃいますし、ティアマガに掲載されている平均値を見ても、自分の売り上げ冊数よりも(新刊を出したりしてその数字に届くことはあっても)通してみると上をいっているように見えてしまう。
ティアの平均値によく挙がる50冊前後という冊数をコンスタントに売るというのは、なかなか難しいような気がいたしますものね。

ただ――
ほかのサークルさんもブログやTL上で述べていらっしゃるのを幾度か拝見したのですが、ティアマガ(コミティアカタログ)に乗っている『平均値』と自分のところの売り上げ冊数をくらべて「遠く届かない」と落胆するのは、ちょこっと早計な気はします。
『平均値』はあくまでも、「アンケートを出したサークルさんの売り上げ冊数を、アンケートを出したサークルさんの和で割ったもの」。なので、外周で百部超〜数百部を売るサークルさんのデータもそこにはいっていて、平均値を大幅に上昇させているところはあります。極端な話、(ずっと数を減らした仮定モデルとして)アンケートを5サークルさんが提出し、4サークルさんが売り上げ10冊でも、1サークルさんが300冊だったら平均値は(300+10+10+10+10+10)÷5=68になってしまう。
全体の「これくらい売れたサークルがいちばん多い」という数は『平均値』ではなく、『中央値』のほうに示されます。
ここの値は、だいたい毎回のコミティアを通して10冊台の前半から動かない感じです。
ティアマガの売り上げデータのレポのところには何冊くらい売れたサークルさんが(アンケートを提出した中で)いくつあったかのグラフも掲載されているのですが、それを見ると、売り上げ冊数が0〜30の間にあるサークルさんが全体の半分よりもずっと多くを占めていることがわかります。

もちろん、「ほかのサークルさんが売れていないのなら自分も売れなくていいや( *´ ω`*)」ということではないのですが――ただ、すくなくとも「漫画サークルさんは売れてて、それにくらべて自分のような文章サークルは売れない」というのは、ネガティブな錯覚であることは明らかだと思います。「なかなか売れないなあ……」という苦心を背負っているのは、大半の、文章ではないジャンルサークルさんも同じこと。

次回以降の項目でも述べるのですが、オールジャンルの即売会の一般参加者のかたの来場目的の比率として、小説(文章)を買おうということより漫画を買おうということのほうが割合的に多いということはもちろん否定できないとは思います。
ただ、「漫画サークルさんは漫画サークルさんであるというだけで売れて、文章サークルは文章サークルというだけで売れない」なんてことは決してない。「なかなかお手にとってもらえないなあ。どうしたらもっと見てもらえるのだろう……」という僕らの悩みは、即売会にでている文章/絵/漫画サークルの大半に共通している悩みなのだと思います。
隣の芝が青く見えるのはいたしかたないことですが、必要以上に自分の庭の芝が枯れているように錯覚して凹んで、手入れを怠ってより枯らしてしまう――というのは生産的ではないので、冷静にデータを見ていかねばなあ、と思う次第。


……さてさて、この調子で書くと(7)まで語るのにまたえらく時間がかかってしまいそうなので、ちょこっとずつ分割して書いていきたいと思います。
(2)以降は、また次回に……!
posted by つむぎゆう at 03:01| Comment(0) | 文芸同人についてのあれこれ
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