2013年02月24日

「創作文芸は売れないのか?」ということについて

日記をブログに切り替えてから、いつのまにかずいぶんと月日が経ちました。
ずいぶんと月日経ったのですが――
実を申しますと、日記をブログに切り替えたときに意図していたことのうちのひとつを、まだ本格的に果たしていなかったりします。

文芸というジャンルについていろいろ思うこととか、そのときどきのジャンル内での動きについてとか、イベントについての(参加レポート以外の)感想とか。ひとつの記事を独立してリンクを提示できるブログ形式のほうが、リアルタイムで「思ったこと」を書きやすいのではないかなあとか。ブログに切り替えたときには、そういう気持ちがあったのです。

もちろん、「文芸/文芸ジャンルとはこういうものである/こうあるべきである」というような論調は自分自身読むの苦手なので、なんとなくつらつら僕はこう思うんだけどなー、的なところを思いついたときに書いていきたいなあと、そんな風に考えております。(そうこうしているうちにツイッターを始めてしまったので、リアルタイムではある程度そっちで書いていくようになってしまったこともあるのですが)

そんなわけで、そうしたエッセイの第一回目のテーマは何にするかというと――実はもうずいぶん前から決めていたのです。
ブログに切り替えたきっかけ、「いろいろ思うことを書きたい」という動機も、もともとはそのテーマを書くことを頭に思い描いてのものでしたから。

――文芸同人誌(文芸ジャンル)は売れないのか?

そうです、これです。
文芸界隈で定期的に浮上する、この命題。
まあ、自分の周りのサークルさんでは直接この嘆きを呟かれるかたはいらっしゃらなくて、どこか別のところで発されたつぶやきに対してそれぞれ思うところを述べる形でツイッターのタイムライン等に反応が広がる、というかたちが多いのですが――
それでも、ときおり何処かからこの「文芸ジャンルは売れない」という声がもたらされるたびに何らかの波紋が広がるので、それに対する肯定否定はともあれ、やはりジャンルに身を置く人間として声をあげたくなる話題なのかなあと思います。
また一方で――大型掲示板や匿名ダイアリーなどの場所、ときには個人の日記やツイートなどで、「創作文芸は売れない」から始まって「本を手に取られたけど『なんだ文章か』といわれて戻された」「***(イベント名)で文芸の落選率が高かった」等々といった文章を見ることはときおりあるので、(一部煽り的なものはあるとしても)本心の部分でそう考えている文芸界隈のかたも、もしかしたら少なからずいらっしゃるのかもしれない。
そんなこんなで、自分もこのあたりでひとつ、この命題に対する自分の考えを綴ってみようかなあ、などと思うのです。
(※そもそも数が売れるということだけが目的ではないというところはあるし、数なんて二の次! というスタイルと心構えのサークルさんも数多くいらしゃいますが――ここではあくまでも、「多くの本を手に取ってもらいたいのにそれがかなわない」という意味合いでの嘆きにたいしてを想定して書いてきます)



で。
最初にいきなり述べてしまうと、僕はこの「文芸は売れない」という声に対しては否定派のひとです。
もっと言ってしまうと、
「文芸ジャンル(文芸同人誌)は売れない」
という言説が、初めて目にした時(もう10年以上前)からあまり好きではないです。
文芸ジャンルが文芸であるというだけで売れないなんてことはないし、売れなかったとしてもそれはジャンルや即売会のせいじゃない、と思う。

もちろん、自分のところは売れてるよ! とかいうことではないです。
イベントによってはもう、凹むくらい売れないことがある。コミケやコミティアで今回はいい感じだったなーって思っても、ちょっと気を良くして多めに既刊を持ち込んじゃった次回の同じイベントであれれれ? って思うくらいに伸びなくて、搬出の宅配便の列に並んだときに抱えた段ボールが物質的にも精神的にもずっしり重く感じることもあります。
好きで作った本だもの、読んでもらえないと悲しいですよね!

ただ。
そこでその「文芸“ジャンル”は売れない」「文芸ジャンル“だから”売れない」という思いに至ってしまうのは、やっぱりなにか違う、という違和感がある。
僕があるイベントで本が売れなかったという事実は、あくまでも僕(のサークル)がひとりで背負っていくべきではないかなあと思うのであります。
でないと、どこだダメだったのかなという反省もできないし、次につなげる要改善点を考える思考もでてこなくなってしまう。
創作をしている以上は、自分の作品もキャラも好きだし、作った本には愛着もあるし、文章書きとしての自分に(いい意味でも悪い意味でも)プライドがある。その愛着とプライドが「本を手にとってもらえなかった」というかたちで傷をうける危機にさらされたとき、自分(あるいは自分の作品)がいたらなかったのではないかというところにはなかなか目を向けたくない気持ちは、当然はたらきます。
そういうとき――ジャンルやイベントという、自分の外部にあって自分ではどうにもできないものに原因を うりゃっ! と投げちゃうのは、楽ちんな道ですものね。
プライドを傷つけるものを回避する楽な方法を覚えてしまうと、なかなかそこから抜け出せなくなる。

かといって、売れなかったら「ああもう自分(自作)はダメだ!」とストレートにとらえて全否定された気分になってどん底まで落ち込むべきかというと、そういうわけでもないのだと思うのです。
売れなかったという結果はジャンルやイベントのせいにはしない、といっても、自分の作品そのもの(あるいは、自分の実力)がすべての原因、というところにまでストレートに直結させるまえに、いろいろ考えるところはあると思います。

ディスプレイは人目につきやすかったか?
イベントの傾向ともっていった本はあっていたか?(イベントが悪い、という意味ではなく、例えばオンリーなどでそのイベントに一般でいらっしゃるひとの買いたい本の好みの区分に、自分の持参した本は合致していたかという意味で)
告知(WEBなどでの)は為されていたか?(自分のHP以外でも、いろいろな方法はあります)
本を立ち読みしてもらうまでの誘導になるもの(わかりやすくあらすじを書いたものなど)は足りていたか?
(立ち読みをしてもらったとして)本文は読みやすいレイアウトになっていたか。文字が小さすぎたり、行間が狭すぎたり、縦中横がへんてこだったり、ワードでルビをふったときに行間が不均一になるのがそのままになっていたりしていないか?
自分のところが売れなかったのがショックなあまりに、直接目にしたわけでもないほかのジャンルやほかのサークルさんの売れ行きを妄想だけで過大に見積もって自分だけが売れなかったように錯覚していないか?

内容の良しあしのほかにも、本が売れない(あるいは、売れないように感じる)原因というのはたくさんあります。
もしもこれらをすべて万全にしていったとしても、そのときのほんのちょっとの差異や流れの違いで本が売れない巡りあわせの日というのも必ずある。
立ち読みをしてくださったかたが本を戻して買われなかった場合も、単に好みや嗜好分野にあわなかったというケースだって考えられます。
それだけで、自分が(自分の技術が)否定されたと思って落ち込んで停滞するのはちょいと損でしょう。

もちろん、技術(文章力とか)が足りないのが原因という場合もあります。
ある。
これは当たり前。
買い手のかたがこれくらいのものを読みたいという領域に技術が届いていなければ、お金を出して買ってはもらえない。
この場合は自分の作り手としての根源的なところに話がかかわってくるので、たしかに落ち込みますが――
ただ、これに関してはもう、買ってもらえるところまで技術を磨いていくしかない。
技術を磨いていくには、そのつど反省しながら長期的に書き続けていくほかはなく。
ジャンルやイベントといった自分以外のところに責任を放り投げて安堵している暇はないわけです。

ずいぶん長く、まわりくどくなっちゃいましたが――

■本が売れなかったとしても、それは文芸というジャンルのせいでもなく、イベントのせいではない。原因を持つのは自分自身。
■ただし、本が売れなかったことは必ずしも、作品が拙い、ということだけに原因があるとは限らない。ほかに改善できる点はあるかもしれない。
■仮に作品が拙いことが原因であるとしたら、それはもう不平とか述べる前にこつこつ書いて修練積んで上達するほかはない。

というのが、「文芸ジャンルは売れないのか」という命題に対しての、僕の意識の持ちようとしての考え方であります。

意識の持ちようとしての、と書いたのは。
すでにここまでご覧になってきて、あれ? 命題からちょっと話がずれてないか? と思われたかたもいらっしゃるのではないかと思われるのですが――
では「文芸ジャンルは売れない」というのは、具体的な、イベントでのほかのジャンルとの対比においての数字的なところにおいて本当なのか嘘なのか、という点に、ここまで自分は触れていません。
なので、そんなのは精神論に過ぎない、と言われてしまえば返す言葉はなく。

「創作文芸は売れない」
「本を手に取られたけど『なんだ文章か』といわれて戻された」
「***(イベント名)で文芸の落選率が高かった」
といったところは、実質的にあるのかないのか。
それほどはないのだとしたら、どうしてそうした声が生じやすいのか。
文芸ジャンルにときどき発生する「冷遇されているのではないのか感」はどこから生じてくるのかについて、次の回では自分なりの考えを書いてみたいと思います。

(※あ、眼鏡時空の告知など何回か間を置いてから、イベント後くらいに続きを書いていく予定ですー)
posted by つむぎゆう at 15:58| Comment(1) | 文芸同人についてのあれこれ
この記事へのコメント
創作文芸に限らずオリジナルの漫画にも同じ事が言える部分が有るのでとても興味深く読ませて貰いました。
Posted by ぐり太 at 2013年02月25日 00:04
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