2015年08月09日

夏コミ告知その1 新刊(オフセット)出ます!

 コミケのスペース告知して以来ご無沙汰になってました(汗)
 気付けば夏の祭典ももう一週間後――と申しますか、自分が参加するのは1日目(金曜日)なのでもう5日後ではないですか。
 ここのところずっと、新刊告知とかしないままイベント当日を迎えてしまっていたので、さすがにこの夏コミはいろいろお知らせをさせていただきたいと思います。

 てなわけでまず今日のお知らせは――新刊、出ます!
 TOKYO SWEET ROOMS(1) 
  ― 銀座ゴーストマンション その1 ―

スクリーンショット 2015-08-08 11.53.01.png

 いつの間にか二人はまた、ビルの間のやや細い露地に入っていた。
 さっきの道のように飲食店のネオンが目立つわけでもなく、ところどころになにかの事務所らしい地味な看板がかけられているくらい。見渡す限り人通りも、仕事帰りと思しき背広姿の男性が数人歩いているだけだ。
「どうかしら。さっきのあれはともかく、こちちの第一印象は」
 穏やかな笑みを絶やさぬまま、由姫が訊ねた。
「うーん……思ったより、こう、ぱあっと華やかってわけじゃないんだな、って感じ」
 つとめて普段使いの言葉に切り替えつつ、亜紀は答える。
 強がりで口にした言葉というわけではなかった。
 いま歩いている通りの、閑散とした空気もだけれども。駅前や大通り交差点の賑わいも、もちろん人は多いものの、あまり洗練された印象は受けなかった。
 古びたネオンの看板や、埃の積もり重なったガード下のアスファルト、あまりひとの気配のないビルが雑然と押し固められている感じで。
「東京で、銀座もすぐ近くだっていうし――もう少し、こう、お洒落な雰囲気の所なんだって思ってた」
 言ってから、亜紀はあわててかぶりを振った。
「ああ、いや――別に、そういうのが好きなわけじゃないんだけどよ」
 なんだかこう、強がろうとすればするほど逆に田舎者感が丸出しになってしまう気がする。
 頬にのぼる熱を感じつつ咳払いをすると、由姫はくすりと笑った。
 す……と制服の腕が持ちあがり、白い指が右方の斜め上をさし示す。
「向こう側に、高層のビルが見えるよね」
「え? ――あ……!」
 その先をまなざしで追って、亜紀は思わず目を見開いた。
 茜闇に沈む、古い雑居ビルの谷間。その谷間から覗く遠い空に、ぼんやりと光る巨大なビルがそびえているのが見えたからだ。
 それもひとつではなく、四つ、五つと連なり、重なりあって。
 目の前の通りのビルが古びた色合いに翳っているがゆえに、夕空に浮かびあがる高層ビルの群れはどこか、巨大な蜃気楼のように現実離れして見えた。
「あれは、汐留のシオサイト。ここ何年か前に再開発されたばかりの一角ね」
 亜紀さんの東京のイメージってあんな感じかな、と、彼女はレンズの奥で目を細める。
「銀座って言ったけど、いま歩いてるの、住所で言ったらもう銀座なんだよ。銀座八丁の八丁目、そのいちばん端っこだけれど。
 こっちのほうに少し歩くと有楽町。向こう側に行くと、六本木だって二キロは離れてないかな」
 相変わらずさほどの人通りも見られない、路地裏のビルの間。くるくると様々な方向を指差したのちに、由姫は呆気にとられた亜紀に悪戯っぽく肩をすくめてみせる。
「基本的にこう、ごちゃまぜなの。きらびやかな場所があるかと思えば、そのすぐ隣にこういう、どんよりした場所がある。通り一本違ったら、建ってる建物の時代とか雰囲気もぜんぜん違うしね」
 つややかな唇に浮かぶ、穏やかな苦笑。
「都市計画なんてよく言うけど――結局のところ、考えなしにあとからあとから継ぎ足していった不恰好な積木細工みたいなものなの、東京(このまち)は」
 語る言葉こそすこしばかり皮肉げだが、由姫の口調に辛らつな響きはない。
 むしろ、楽しげで、そしてどこか愛しげな。
「……そういうごちゃまぜな場所なので、居やすいのだけどね。私たちみたいな存在(もの)にも」
「――え――」
 ぼんやりと声をあげながら、亜紀は気づいていた。
 穏やかな口調も表情もそのままに、けれども目の前の少女がまとう空気が、ほんの微かな変化を帯びるのを。
 路地に動いた夕風が、亜紀の短い髪を撫でる。
 生じた沈黙に、離れた大通りの車の音がかすかに聞こえてきた。
「亜紀さんも、《里》の出身でしょう?」
「――――!」
 一瞬、息が詰まる。
 もちろん、出自を知られていることは驚くにあたらない。
 これから向かう先は、私が《里》の出であることを知って身元の引き受けを了解したのだ。その使いである由姫がそれを伝え聞いていることは当然だった。
 先ほどの《ちから》を見れば、由姫自身、社会の表側のみに身を置く人間でないことは明らかなのだし――
「あ――大丈夫だよ、そんなに身構えなくっても。いきなり驚かせてしまって、申し訳なかったかな」
 再びくすりと唇を綻ばせて、由姫は言葉を続けた。
「私も、《里》の出なの。っていっても、亜紀さんとちがって西のほうだけど
「え――そう、なのか……」
 うなずきながら、亜紀はまた目を見張る。
 そうかもしれないとは思ってはいたものの――社会から隠れたところで《ちから》に関わる稼業につく者達の間でも、《里》という単語はあまりたやすく口にのぼらせない、一種の禁句となっているからだ。
 一般的な《里》という言葉とは異なる、各地にひっそりと点在する《ちから》を持つ者達の隠れ集落。
 ほんの二年前まで、自分を飼い殺していたあの場所。


 田舎から上京してきたちょっとがさつな短髪少女と、黒髪ストレートの一見おしとやかな眼鏡娘さんのコンビが、わけありの不動産(いわゆる事故物件)やらいわくつきのスポットやらにまつわるトラブルを解決していく女子中学生祓い屋もの。
 自分の好きだった、一昔前のB級退魔もの(ソノラマ文庫とかそのあたりの)の空気が出せればいいなあと思って書きはじめたシリーズものの第一話です。
 まだ物語のほんのさわり部分ですが、A5 58ページ 100円での頒布を予定。
 pixivで、上の引用箇所とはちがう冒頭部分をお試し版として公開しています。

 懐中天幕は、コミケ1日目(金曜日)東5ホール ぺ12b にてサークル参加いたします。
 既刊も、毎度ながら全作品女子中学生さんヒロインもので取り揃え。
 もしよろしければ、ご覧になってやってくださいまし。


 さて、今回のコミケでは自分のスペースでの新刊のほかに、ひとつアンソロジーにも参加しています。
 次回の日記でまた、お知らせさせていただきますね!

posted by つむぎゆう at 23:59| Comment(0) | 即売会参加情報/レポート
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: